甘いイチゴの見分け方

Farming, Root Farm, 苺隠者サッチン

 湘南地域では1月ごろからイチゴ狩りが始まり、多くの家族づれでイチゴ農家さんのハウスが賑わいます。真っ赤なイチゴはどれも甘いのか、形は甘さ・うまさに関係はあるのか?そんな疑問を北関東のあるイチゴ農家(「苺隠者S」さん)に聞いてみました。
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>Sさん
 はじめに、クイズから。写真にあるイチゴのどちらが甘いでしょうか?
■写真A

 左の三つのイチゴは間違いなく甘い。ヘタ下が伸びやかで、完熟なイチゴ。右の三つは、生産者が通常で収穫する平均的な色あいのイチゴだが、右のイチゴをしばらく収穫をまって株につけておくと左のイチゴになるかというと、残念ながらほぼならない。
■写真B

 左にむかって収穫のタイミングが遅いのだが、、、
 ヘタ下が伸びないイチゴはいつまでたってもヘタ下は伸びず、そして甘くならずに過熟になって傷んでしまう。
 
>Root
 しかし、お店で見るのはヘタ下が伸びたものでなく、上の写真A中の右の形のものばかりですよね?それはなぜですか?
 
>Sさん
 それはそれらのほうが「棚持ちがよい」から。つまり、収穫してから売れるまでの間、過熟になるまでの期間が長く棚に置いておくことができる。

>Root
 甘さより、陳列のほうを優先しているのですね。それでは、ヘタ下が長いという実の形と、甘さとの科学的な関係を教えてください。
 
>Sさん
 ヒントは、ジベレリンという植物ホルモン。

 果実の甘さは、その部分に糖分が集積しているかどうかで、いかに株のほかの部分でなく、果実に糖を集積させることができるかが鍵。クリスマスの果物となった苺にとっては、冬場に糖を実に集積させる必要があるが、この時期は本来休眠に向かう時期。植物は休眠に向かうと、糖が根のほうに転流する。
 
 イチゴなどの多年草は、冬に枯れずに翌年の春に、再び成長しだす。低温短日の冬場は地上体積を最小限に抑え、春先に伸びるために必要な糖を根にためる。芋と同じイメージ。なぜ、糖をためるのに根が適しているかというと、地表から15cmから下の地下部は温度差が少なく、外の低温影響を受けづらいから。
 そこで、休眠を打破し、細胞の縦伸長を促すジベレリンを与える。
 
>Root
 ジベレリンの投与によって、「春だ」と思ったイチゴが、糖を根から上のほうに流していくわけですね。その糖の流れと実のヘタ下が長くなる形との関係は?
 
>Sさん
 植物体が休眠から離れて生育するってことは、地上部に積極的に糖を転流するということ。ゆえに、花部がついている状況なら葉より先の果実部に糖の転流が起こる。細胞の縦伸長を促すジベレリンが、糖とともに師管が集中するヘタ下に流れ込み、その部分の細胞を伸ばす。
 
>Root
 甘いイチゴについて、ヘタ下が伸びやかという形状以外の見分け方はありますか?
 
>Sさん
 不受精果は甘い。
■不受精果(受粉がうまくいかずに、形が崩れている)

 
>Root
 なぜ、不授精果は甘いのですか?
 
>Sさん
 不受精だと、赤熟するまでに実の中でソース(光合成産物)の流れ込みのタイミングにばらつきがでるからでは?
 受精した種(これが実はイチゴの正式な果実部)からオーキシンが出て、その果実がのっているカタク部位が肥大してできたものがいわゆる「イチゴ果肉」であり、肥大細胞部位は普通の果肉になるが、不授精部位細胞は肥大できない細胞がありながら細胞分裂自体は一定数ある。そこが甘さを誘導しているのではないか、、、
 例えるなら、魚。しっかり魚肉の切り身も旨いが、いわゆるコオナゴなどを口いっぱいに頬張るのも実に旨い。
 したがって、スーパーで甘いイチゴを求めるなら、ヘタ下が伸びていたり不授精果で形が悪いものを狙うのがおすすめ。しかも、これらB品は安い。時折、スーパーの箱売り目玉商品で売られることがある。

>Root
 ありがとうございました。ところで、イチゴの味については「甘さ」だけが要素なのでしょうか?
 
>Sん
 「旨み」もある。
 同じイチゴでも、甘いだけでなく旨みをだすのは、カリウムのよく効いた花梗枝(かこうし)が太い株のイチゴ。

 左の花梗枝は太く、道管、師管(イラストに明記)の太さも比例。人間でいえば太くてしなやかな血管。また、カリウムがよく効いている植物体は人でいえば高代謝で沢山食べて沢山働けて沢山うんこして肌艶よく、かつすっきり睡眠もとれて、次の日のコンディションも超良い状態、みたいなイメージ。
 コンディション良い状態のイチゴは新根がよくのび、水と肥料を吸いあげ、元気な実を実らせる。良い新根の動きがあれば、光合成に必要な水を十分に吸える。元気なイチゴ株には、溢液(いつえき)現象がみられる。この現象は、いわゆる「葉水があがる」とも言われ、葉の先に水滴が付いている状態を指す。

>Root
 苺隠者Sさん、ありがとうございました。イチゴの甘さのメカニズムが分かると、イチゴ狩りも一層楽しくなりそうですね。また、イチゴについて教えてください。
 
【まとめ】
①ヘタ下伸びやかな形状のイチゴは、甘い
②不受精果は、甘い
③枝が太く、葉水があがっている株の果実は、「旨み」もある

■ジベレリンがよく効いた甘いイチゴ

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